会長挨拶 〜建築士会の未来へ〜

一般社団法人京都府建築士会 会長 衛藤照夫

21世紀も16年が過ぎました。振り返って建築に携わる建築士である自分と建築士会の今後を考えるべき時だと思います。私は2002年に会長に就任し、2009年には新しい建築士会の再出発として、自助努力を重ねる会員の支援にあたりたいとの所信を述べました。十分なことができたかどうかは不安なところですが、行政政策への協力、また士会ならではのまちづくり活動や建築士の資質向上に取り組み、一定の成果が生まれているのは会員皆さまの努力や力そのものであったと思います。

今年は、12月8日に建築士会の全国大会が京都で開催予定です。
「山とまちと木造建築」という大会テーマはここ3年前から温めてきたもので、今までの建築士会活動の或る意味で一つの集約でもあるのです。安全で健康な暮らしを取り巻く自然環境や都市環境。暮らしの文化や芸術のインキュベーターとしての木造住宅や建築物。これらの創造にかかわる建築士としての活動とその活動支援を行う建築士会を謳い上げるのが今年の全国大会の本質だと考えます。

1990年を前にしたバブル崩壊後、小康状態であった日本経済もその後低成長時代を迎えさらに、1987年の消費税増税後デフレ基調が明快となり現在に続いています。失われた20年、いや30年といわれるゆえんです。

この状況は建設投資にも色濃く反映し、国交省による建設投資額はピーク時の1992年度の約84兆円から2010年度の約41兆円まで落ち込みましたが、その後増加に転じ、2015年度では約48兆円となる見通しとされています。しかし現実的にはピーク時からみれば40%に近い落ち込みです。この間にストック活用が強く語られてきましたが、経済循環的にはデフレ期になされた緊縮財政が招いた結果としか思えません。
ただ、少子高齢化を反映した生産年齢人口減少という社会変化により、失業率は減少し、生産性の向上が果たせた場合は減少した生産年齢層の賃金向上は期待できます。昨年は、これらに逆風となる恐れのあるTPPなどグローバル経済の進展にブレーキがかかり、期待できる変化ではありましたが、今後の国際情勢の方向性次第では判断が難しいところでもあります。ともあれ緊縮財政の小休止、内需拡大への方向転換、生産性の向上が建築界の進展に期待したいところです。

社会が経済的観点から重要な局面を迎えてる中、人々の幸せのために果たす建築の役割は重要です。忘れてはならない福島の不幸な災害は、本来の住環境としての復興にとりくむべきで、私たち建築士が果たすべき役割は大きいと思います。
また、教育問題で語られる家庭教育やコミュニティの崩壊などについては、そのバックグラウンドとしてのまちづくり活動や住まいづくりは建築士の役割です。高齢者介護施設は漸く充足方向ですが、障害者や子どもの施設は不十分であるといわれています。建築士は単に建築の数量を充足させるためだけでなく、質や本来の目的にかなう建築生産を実現できるプロフェッショナルなのです。
このような観点で自分たちの業務・役割に向かう誇りを持つことが、より良い仕事を遂行できる道であると思います。

建築士会は、このように考える建築士の仲間を求め、集い、支援する役割を担います。私たちは社会の中にあって、人々にとって有益で有意義な職能団体なのです。日々の精進、日々の創造が社会と私たちの喜びとなればと願っています。

2017(平成29)年4月